消費増税は是か非か?

2019年06月11日

いよいよ10月の消費増税が近づいて来ました。「リーマンショック級の出来事がない限り…」と繰り返す日本政府。好調だった世界経済に、米中の貿易問題という大きな影が忍び寄る今日。そして6月28日は日本でG20サミットが開催されます。果たして消費増税の行方は?

ところで、そもそもどうして消費増税が必要という意見になっているのでしょう。「高齢化で社会保障費が増大する」「財政再建のため」「子孫につけを残すな」という感情論に訴えられると「増税やむなし」という国民が多いような気がしますが、ちょっと待ってください。「消費税さえ上げれば税収が増える」というのが前提のロジックになっていませんか?本当にそうなのでしょうか。実際過去の実績を見る限り、1997年と2014年の消費増税時の税収は減り、消費税を上げなかった小泉政権時の税収は増加しています。全く逆の現象が起こっているのです。

ということは、そもそもこの「消費税さえ上げれば税収が増える」という前提自体根拠が無いですよね。つまり消費増税論者には、どうしても消費増税したい他の理由があると考えるべきでしょう。ちなみに日本のマスメディアはあまりにも消費税増税に熱心だと思いませんか。何故でしょう。そのバックにはスポンサーである日本の大企業がいます。その代表格が経団連。彼らの最大のリクエストは法人税を下げること。そのための財源として消費税の増税が必要なのです。実際、日本では消費税のアップに反比例して法人税率はダウンして来ました。さらに彼らの多くは輸出企業で、なんと国内で支払った消費税はすべて還付されるのです。一種の輸出補助金みたいなもので、消費増税になっても彼らは何のリスクもありません。負担が増えるのは国内の中小企業と一般国民のみなのです。

さらに、財界以上に消費税増税に熱心なのが財務省。彼らの狙いは何でしょうか?法人税は税収が景気に大きく左右されます。また、所得税は労働人口が減少する中で先細りすることが予想されます。そこで、安定的に確保できる財源として消費税を拡大していきたいというのが彼らの悲願なのです。このような彼らのホンネの策略は「財政再建」にカモフラージュされつつ、我々はいつの間にか彼らの思惑通り、マスメディアを通じて「消費増税やむなし」というように洗脳されて来ているのです。

さらに、ここ何十年も日本のデフレ環境が続いてきた理由も考えてみたいと思います。物の値段は「需要」と「供給」で決まるというのは経済学の基本的な考えですよね。この考え方によると、何故デフレになるかというのはとてもシンプルです。それは、供給に対し需要が圧倒的に少ないからという事になります。日本の長期のデフレの原因は多大な供給能力を抱えながら、企業も、個人も、政府も需要を縮小した為に、需要<供給の状態が長期化していたという事です。だから当然のように物価が下がる。そう考えるとデフレ脱却の処方箋は二つになります。一つは供給能力を減らすこと。これは平成30年の間に痛みを伴いつつも随分と進んで来ました。もう一つは需要を増やすこと。民間の需要がまだまだの時ほど、本来は政府の出番です。特に橋や道路、水道等々のインフラが耐用年数を超えてきており、意味ある投資機会は沢山あります。さらに本来ならば、民間の需要を拡大するために減税が必要です。

ただ、ここでもやっかいなのがやはり「財政再建」ありきという呪縛です。しかし、この呪縛を破るような経済理論がアメリカで話題になって来ました。それがMMT(現代貨幣理論)です。「インフレにならない限り、自国通貨での借金がいくらになっても問題ない」という、「借金を返済するのは当然でしょ」と考える真っ当な人間にとってはまさに異端の学説と言えます。一見するととんでもない理論のようですが私は現代版の「地動説」になるのではと期待しています。面白いことに、彼らの理論の正しさを検証する例として日本のケースが挙げられています。実際、日本政府は子会社である日銀にその国債の多くを買い取らせ、実質借金を帳消しにしていますが、ハイパーインフレどころか2%のインフレ目標も達成できていません。あたりまえですよね、そもそも経済全体で供給に対して需要が少ないままなのですから。むしろ、借金の大きさに縛られることなく、インフレ率を基準に、インフレが高ければ財政を絞ったり増税し需要を抑える、一方インフレが小さければ(デフレなら当然のこと)財政出動したり減税するという、極めて機動的な経済政策を行うというのがMMTなのです。

さて安倍首相は消費増税を阻止し、今度こそ日本を成長軌道に乗せることが出来るか。そろそろタイムリミットが近づいています。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
クローバー・アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長 運用統括責任者
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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