アメリカのダイナミズム

2020年02月12日

無題.jpgこの度、1月7日から10日までラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)に行ってきました。世界各地から約4000社が出展し、20万人近くの参加者が訪れる世界最大のデジタル家電の見本市です。会期中には普段100ドル程度のホテル代が500ドルを超えることも。最近、賭博はネット上でのカジノに押され衰退気味で、今のラスベガスはカジノの街というよりは、コンベンションや様々なショービジネスを中心とするエンターテイメントが活力源になっているようです。

さてそのCESですが、一週間でも回りきれないほど膨大な敷地に点在する出展者は主に三つのグルーブに分類できます。まずはグーグル、アマゾン、サムソン、ソニーのようにすでに大御所といえる企業。かれらは商談というよりは企業イメージアップが主な目的のようで、膨大なスペースに存在感のあるパフォーマンスや展示でアピールしています。次がすでに資金調達を完了し、実際の営業活動に余念がないグループ。彼らの出展は商談が主な目的です。最後のグループ、実は大半がここに属する企業なのですが、まだスタートアップの企業で、彼らの最大の目的は資金調達です。大学発のベンチャーも多数出展していました。3坪ほどの小さな展示スペースがずらりと並ぶ彼らの周りには、将来の金の卵を狙ってベンチャーキャピタルやエンジェル達もうろうろしていました。

その4000社の中で一番印象的だったのがサムソン傘下のSTAR Labsというアメリカの研究所が創ったNEONというアバターです。ディープラーニングの技術を使って自分そっくりのアバター(ただし二次元)をつくるのです。ブースの一面に様々な人物の動画のモニターが展示してあるのですが、実はそれはビデオではなく、コンピュータでリアルタイムに制御された映像でした。創業してまだ数ヶ月の間でここまで進化した事を強調していましたが、あと何年もしないうちにまるで自分自身が応答するようなアバターが出現するのでしょうか。もしそのような事が実現すれば、様々な生活のシーンで我々のアバターが活躍する時代になるでしょう。

ただ技術面だけでなく特に注目したのはそのNEONのリーダーがインド人であったこと。韓国企業傘下の研究所ですが、様々な国籍のチーム編成でプロジェクトが運営されていました。先ほどの多くのスタートアップ企業も日本はもちろん、世界の様々な国から集まって来ていて、事業の成功を目指しています。アメリカは彼らのような外国人や外国企業にも、どんどんチャンスを与える国であることをあらためて知る機会になりました。

その後、ロサンジェルスを訪れ、スイスジュネーブ時代のご縁で、現地のイラン人コミュニティの人々とも面談する機会がありました。驚いたのは、アメリカの高級住宅街で有名なビバリーヒルズ市が、実はアメリカのイラン人コミュニティの中心になっており、元市長もイラン人であったこと。またお父様が前オバマ政権の政策顧問だったというイラン人女性にもお会いして、ニュースで報道されているようなイランとアメリカの対立をよそに、イラン人コミュニティがアメリカ社会に大きく根づいている実態を目の当たりにしました。彼らの多くは1978年のイラン革命を機にアメリカに移り住み、約40年の年月をかけ、現在の地位を築いていったわけです。彼らの努力も相当なものだったでしょうが、そういった彼らに成功する機会を与えたアメリカという国の懐の大きさを感じざるを得ませんでした。

大量生産、大量消費の時代が終わりに差しかかり、これからは創造力が勝負の時代になります。創造力は異質な出会いの中にこそ生まれることを考えると、やはり新しいものを生み出すアメリカのダイナミズムはこれからも有効に働くのでしょう。アメリカが圧倒的な一極である時代はやがて終わり多極化時代が来ても、あいかわらず重要な極であり続けそうです。

長期投資の対象とすべき企業も、このような人材のダイバーシティに対応できる企業であることも不可欠です。さらに、われわれ自身の価値も、自らの才能やどんな文化資本を持っているかだけでなく、どれだけ多様な面白い人脈とネットワークをもっているかが重要な時代になると思いました。同じようなタイプで集まって傷を舐め合うより、異質な変わった人間と交じり合い、刺激を受けながら自らの成長を楽しみたい。そんな思いにさせてくれた今回のアメリカ出張でした。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキアセットマネジメント
代表取締役社長 運用統括責任者
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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