米中冷戦の決め手

2021年7月 9日(金)

 キャプチャ.JPGバイデンがアメリカの大統領に就任したのが今年の一月。トランプ時代にはあちこちでケンカを売って、オウンゴールを重ねてきたアメリカでしたが、それらの国々とも和解し、対中国包囲網を着実に築いているようです。当初は親中派と言われていたバイデンでしたが、彼としてもオバマ時代の副大統領として、2015年のAIIB(アジア・インフラ・投資銀行)事件を経験し、それ以降の対中政策を180度転換した経験があるだけに、もはやその流れに逆らえなかったのでしょう。当時、アメリカは、中国が主導するAIIBに参加しないよう自らの同盟国に呼びかけをしたのにもかかわらず、イギリスを筆頭にほとんどの同盟国がこぞってAIIBへの参加を表明してしまいましたから。

そんなアメリカの外交政策で特に注目すべきは、最も重要なカードといえるロシアとの関係でしょう。ロシアはGDPの規模では韓国クラスですが、なんといっても軍事大国であり、また資源大国でもあります。現在は中国陣営側の中心的存在ではありますが、ロシアがアメリカ側に寝返るか、中国から離れて中立的な立場になることで、この冷戦は決着ということになるでしょう。かつて第二次世界大戦のとき、ナチスドイツに対峙するため当時のソ連と組み、さらに戦後の米ソ冷戦の時代には中国と手を組んだアメリカですから、目的達成のためロシアと手を組むことは充分考えられます

 そんなアメリカとロシアの今後を占うバイデンとプーチンの対談が、G7の直後の6月17日、スイスのジュネーブで行われました。目立った成果は報じられていませんが、遅刻常習犯のプーチンが時間通り到着し、さらに驚くべきことに、次の日のロシアの国営放送を見ると、プーチンがバイデンのことをベタ褒めしたのです。この対談直前の両国関係は、ロシアのダークサイドによるサイバーテロで、アメリカのコロニアルパイプラインのオイルの供給が絶たれ、大問題になっていたこともあり、冷戦後、最悪とも言われていました。しかし実際の動きとして、バイデン政権はトランプ時代には自国のシェールガスを売り込むため反対していたドイツとロシアのパイプライン「ノルド・ストリーム(Nord Stream)2」の建設続行を黙認しています。一方のロシアの方も、2014年のクリミア半島侵略後の西側の経済制裁により、ロシアの経済はガタガタで、それにつれてプーチンの支持率も急落しており、アメリカにすり寄っても何とか経済制裁を解除したいというのが本音でしょう。

 その後行われた中国共産党100周年大会でひとり人民服を着て現れた習近平。台湾、香港、ウイグル問題と国際世論を敵に回し、国内でもこれから深刻化する少子高齢化や、国営企業を含めた多大な債務問題に直面している中国のリーダーが目指すべき姿が、文化大革命等などその経済政策の失敗で中国を混迷に導いたかつての毛沢東なのでしょうか。ネットを通じて笑顔で祝辞をおくるプーチンの胸の内はどのようなものだったでしょう。先の冷戦終結後、平成30年間を通じ、中国は日本を経済的なライバルとするアメリカをパートナーとして、GDP35倍もの成長を遂げました。一方、日本はその間わずか1.6倍でした。この米中冷戦の行方は、これからの世界経済の大きな流れを決定していく重要なファクターであることは間違いないでしょう。我々長期投資家にとってこれからも注目していきたいテーマです。

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多根幹雄