ダ・ビンチをめざせ!

2021年5月14日(金)

Da_Vinci_Vitruve_Luc_Viatour.jpg 今の時代を未来から見た時、どのように表現されることになるのでしょうか。もっとも新型コロナで急激に世界が変わったように思えますが、ある意味新型コロナは変化を加速させただけかもしれません。

 実はその変化の兆しは2014年から始まっていました。その年の2月、ロシアがクリミア半島を占拠、西側諸国との間に緊張関係が生じます。また翌年の2015年には中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に日本を除くアメリカの同盟国がこぞって参画を表明、同盟国に不参加を呼び掛けていたアメリカはようやく事態の深刻さに気付きます。そこから対中国政策を親中から敵対へと180度転換し、そして2018年のペンス大統領のワシントンでの約50分もの演説を機に、米中の新冷戦へと時代は突入していきました。つまり、1989年に、ソ連の崩壊とともに冷戦が終結、そして始まったグローバリゼーションが、2014年を転機にまたしても大きく変化の時を迎えたということになります。

 グローバリゼーションとは何だったのでしょうか?その本質は、それまでの30億人の旧社会主義国と貧しい人々と、豊かだった11億人の人々が同じ市場で競争する「大価格競争の時代」の出現だったとも言えます。その為、徹底した規格化と、その結果としての世界的な「分業」体制が構築されていくことになりました。例えばソニーやパナソニックなどの総合家電メーカーが苦しむ中、日本電産や、多くの台湾企業がそうであったように、得意分野に特化し、世界の企業にパーツを供給するメーカーが急成長します。つまり「分業」と、その結果として「専門性を武器に世界で勝負する時代」であったといえます。しかし、新冷戦のスタートや新型コロナの影響を受け、人・モノ・金・情報が制約なく行きかう時代は終焉しました。その為、今回の半導体不足に代表されるように、効率だけを極限に追求する弊害がいかに深刻かに気づき、企業も国家も国際的な分業体制からの修正を迫られています。これは個人にとっても当てはまります。業務のアウトソースや派遣サービスは近年大いに発達して来ましたが、今ではそれらへの依存が高まりすぎたことによる弊害や、そもそも機械やロボット、それにAIの進化により、多くの専門職が将来消え去る運命になろうとしています。

 そこで求められるのが、複合的な能力です。レオナルド・ダ・ビンチや、平賀源内がそうであったように、芸術家であり、科学者であり、その他さまざまな分野で一級の才能を発揮し、一人で何役もこなせることで、個人としての差別化をはかると同時に、様々なアングルからの見方を駆使し、創造力をさらに増幅できたといえるでしょう。グローバリゼーションによる徹底した効率化により、あらゆるモノやサービスが安価で入手できるようになった今日、今までに無かった心ときめくモノやサービスが求められています。そんな新しい付加価値を生む創造性が求められる時代だからこそ、このような人材の価値が見直されようとしています。ちなみに、レオナルド・ダ・ビンチが単なる画家であったなら、モナ・リザがこれほど評価されたかどうか。あらゆる分野の天才が描いたからこそ、あの絵がより高い価値を持っているともいえるでしょう。大いに論議を呼びながら、結局「二刀流」を貫いた大谷翔平選手は、ある意味これからの時代を象徴するスーパースターかもしれませんね。

 グループ内に多数の事業を抱え、かつその事業間での人の行き来が活発な企業は、そういう意味でこれからの時代有望だと考えています。何故なら、社員が様々な分野や事業を経験する中で、グループ内に多くの複眼的で創造的な人材を育てるチャンスがあるからです。また、専門性だけでなく、違った領域の事業を社内コラボすることによる新しい価値創造も、単体事業の企業よりは生み出しやすく、様々な組み合わせによる付加価値の創造はどんどん可能が広がってきます。個人は単なる「副業」ではなく、「パラレルキャリア」以上の多くの経験を積むことで、また企業は社内の異なる事業体を組み合わせることで、新しい創造の可能性を追求する時代がやって来たように思います。まだまだこの変化に気づいている人はほとんどいないはずですから、このような視点でこれからの新しい時代の新しい長期成長企業を発掘する絶好のチャンスかもしれませんね。

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 多根幹雄