異端児フランスの行方

2018年11月30日(金)

写真.jpg前回のスイス編「ヴィンテージになれるかもツアー」に続いて、今年はその第二弾としてフランスパリを訪問。フランスと言えば、パリを筆頭に、ヴィンテージになる条件のひとつ「時間と共に良くなる」の塊のようなところです。街中が、時間が経過すると価値が上がっていくものにあふれています。特に美術館に展示された最高傑作の名画やアートの数々、そして街自体も博物館のように美しい建造物を守っています。


 そしてもう一つのヴィンテージになるための条件「自立」ですが、こちらは、国を頼りにしないスイス人とは真反対に、残念ながら国に依存する既得権者が多いのがフランスの特徴です。今回訪れた博物館の多くも「なんでこんなに人間が必要なのか」と思うくらい多くのスタッフで溢れていました。マクロン大統領が年金改革や公務員の削減に躍起になるのも無理からぬ所。しかし、国民からの反発は大きく、マクロン大統領の支持率もどんどん下降していました。そんな国民のイライラに火をつけたのが今回の燃料増税問題です。我々がパリの空港についた時も、デモの影響で、市内に入るのに随分と時間が掛るのではとドライバーも心配していました。

皆さんもお気づきだと思いますが、最近、アメリカのトランプ大統領を筆頭に、自国や自国民の利益を優先しようとする、強烈な個性のリーダーが各国で増えてきました。まさに過去30年ほどにわたり進行してきたグローバリゼーションの負の一面である世界的な弱肉強食社会と、それによる貧富の拡大への反動がそうさせるのでしょう。そんな中で、マクロンは自国よりもユーロ圏を優先し、規制緩和によって自由競争を促進しようとするグローバリストの典型として異彩を放っています。


 フランスというのは面白いところで、以前も異端児ぶりを発揮したことがありました。今から30から35年ほど前、レーガンやサッチャーに代表される「新自由主義」がブームとなり、規制緩和や小さい政府が尊ばれ、その流れは先日亡くなったブッシュ元大統領(父親)とゴルバチョフによる1989年12月のマルタ会談にまで進展し冷戦が終結、そしてグローバリゼーションへと世界が劇的に変化して行きました。そんな中で、なんと当時のフランスのミッテラン大統領は企業の国有化を促進、時代に逆行した政策をとったのです。その中の国有化企業の一社が今話題になっているルノーです。その後、イギリスやアメリカがグローバル金融やIT分野で復活した一方で、フランスは低迷します。その長い低迷の反省から、既存の政党の枠を超えてフランス国民が選んだのが、マクロンのようなグローバリストだったのでしょう。

 そんなフランスですが、今年2018年は日仏国交160周年という記念すべき年でもあります。今回のツアー中にお会いした日本の木寺駐仏大使のお話では、毎日の様に記念イベントが開催されているとの事。さぞかし日仏友好ムードが盛り上がっていると期待したのですが、それが裏切られる体験をしました。そのイベントの一つに来ていた年配のフランス人女性と話していた時のこと、彼女が突如言い放ったのが「ゴーン問題」です。その後、タクシーの運転手からも同様の話を聞くことになり、一企業のトップの問題が、国民感情を動かし、日本に対するイメージも傷つけている事を再認識しました。

 日産という企業は、日本の企業では珍しく、外国人のトップを迎え、グローバルな連合企業として、まさにグローバリゼーションを追い風に世界で成長した企業です。今回の事件は、ゴーンさん個人の問題もあるでしょうが、そんなグローバル企業やグローバル経営者でさえ、日本やフランスはもちろん、アメリカや中国の国益の狭間で、身動きが取りにくくなっているというのが、今回の本質かもしれません。皮肉な事に、グローバリストのマクロン氏自身が、大臣時代に国の株主比率を上げたという事実。規制緩和によって自由な経済活動を目指すのか、それとも国益重視で規制を掛けるのか。今後のフランスの行方から目が離せません。

多根 幹雄